【開発者が語る】ミラブル誕生秘話 第1話『世界を変える水』への挑戦

2025.09.12 ファインバブル基礎講座

泡の魔術師、平江

サイエンスは、2007年設立。取締役会長の青山は工業用洗浄に超微細気泡を採用していることに着目し、人の身体もこすらず綺麗にできると考え、ファインバブルの可能性への探求が始まりました。その青山が直々にスカウトしたのが、“泡の魔術師”と呼ばれる平江 真輝(専務取締役)。

かつて造船関連企業でファインバブルを発生させないための研究に取り組んでいた平江は、現在はサイエンスで、最適なファインバブルを生み出す研究に挑み続けています。

サイエンスの独自技術であるファインバブル吐水技術(ミラブルテクノロジー)は、生活を、世界を、より良く変えていく水を作り出しています。今回は、“泡の魔術師”平江に、ミラブル誕生に関わるお話を聞きました。

平江 真輝プロフィール

株式会社サイエンス専務取締役。

造船研究を経て、水流を活用した健康機器を開発するように。船のスクリューではデメリットとなる「泡」や「キャビテーション」をメリットと捉え、ヘルスケアに活用する逆転の発想により数々のヒット商品を生む。2010年サイエンスに入社、日々ファインバブルの研究開発に携わりながら、開発から生産管理までを一手に担う。令和7年度 知財功労賞(大阪・関西万博特別賞)受賞へと技術面で寄与。

邪魔で仕方がなかった泡をメリットに

平江がかつて勤めていた造船関連会社では、船のスクリューの運動により大量の泡が発生し、船の速度減や摩耗の原因となっていたため、今とは真逆の泡をいかにして消すかの研究を行っていました。

「私がもともと手がけていた造船業では、”泡”や”キャビテーション*1”はデメリットでしかありませんでした。でも大型の試験水槽の水をきれいにする仕事をしていた時に『泡を細かくすると、汚れを含む水の対流がきれいになる』と気づき、泡をメリットとして活用する研究を始めました」

*1キャビテーション:液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象

平江さんの気づきが、「ファインバブル専業メーカー」のサイエンスを支えているんでスー

ミラブル商品化には3年以上の歳月

ミラブルテクノロジーを搭載したシャワーヘッド「ミラブルシリーズ」は、2018年に販売を開始し、爆発的ヒットを記録します。“美顔器のようなシャワーヘッド”を目指したミラブルが製品化に至るまでには、多くの失敗と成功を繰り返します。

通常のシャワーヘッドでは作れない極めて小さな気泡を発生させ、洗浄効果や美容効果を高める技術を突き詰めるには長い開発期間が必要でした。

「流体力学*2は繊細で揺らぎが大きく、大きな実験設備では成功しても、それを家庭用に小さくすると再現できないこともたびたびあります。ですから、ミラブルが商品化されるまで、『シャワーヘッドごと、美顔器にする』と着想してから、実に3年以上の開発期間がかかったのです」

*2流体力学:液体や気体といった「流体」の運動を物理学的に研究する学問

2019年発売のミラブルplusの全長は約220mmで、確かにたいへんコンパクトな製品となっています。

「ミラブルは、1つの吐水口につき約2,000回転/秒の渦流を発生させてキャビテーションを起こします。12箇所の吐水口で同じようなキャビテーションを起こさなければいけないのですが、少ない水流で『狙った大きさの気泡』を『最適数』含有する水を安定的に供給させるのは非常に難しいのです。

泡が細かければ細かいほど、多ければ多いほど良いわけではなく、微細にすることで別のデメリットも発生してしまいますから」

このように試行錯誤を繰り返して、最適な気泡を生むための独自技術は磨かれ続けているのですね。

気泡の大きさによって作用が違うから、目的に応じてうまく使い分けることが大切でスー

「難しい」と言われたトルネードミスト方式実現へ

「後にサイエンス独自技術として特許を取得することになる、トルネードミスト方式の仕組みを生産工場に提案したところ、はじめは“難しい”と言われました。しかし、かつて医療機器を手がけた経験からISO9000などに則って生産管理運用することで解決できるのではと思い、粘り強く実現へとつなげました」と平江は話します。

ミラブルには、サイエンスの特許技術「トルネードミスト方式」が採用されています。1つの吐出口あたり、1秒間に約2,000回転の高速うず流でウルトラファインバブルを生成。

さらに水流が吐出する際、外気を巻き込む機構により、安定して気泡を発生することができ、吐出口中央にも渦巻きが発生することが確認できます。サイエンスが開発したこの技術は、2020年6月、シャワーヘッド及びミスト発生ユニットにおける特許を取得しています(特許-6717991)。

アクリル板へ疑似汚れ(でんぷん糊)を塗布した実験では、ミラブルplusとウルトラファインバブルシャワー(当社旧製品:ウルトラファインバブル(UFB)を発生させるシャワーヘッドアダプター)によりそれぞれの水流を吐出し室温28℃、水温26℃の条件で40秒間洗浄。

結果は、ミラブルplus(左)の方が早い段階で汚れを落としました。洗浄能力には、吐水水流の影響が強く、気泡量のみではなくウルトラファインバブル及び水流発生機構が重要な要因であることを示唆する結果となりました。

※左がミラブルplus(UFB濃度=1cc当たり2,000万個以上)、右がウルトラファインバブルシャワー(UFB濃度1cc当たり1億個に調整し、ミスト状に吐水)

ユーザーの声に応えて継続的な改善

「そして、商品販売後も改善は欠かせません。というのも、ユーザーは時に私たちの想像を超える使い方をされますから。例えばコロナ禍によって、シャワーヘッドを頻繁にアルコール除菌されるケースが多発した際は、表面のコーティングを見直しアルコールで変性しないよう対応しました。さらにその後、素材の開発が進み耐アルコール素材が出てきたので切り替えました。予想外の使い方は学びになれば良いと考え、開発・生産とも常にPDCAを回す体制を取っています」と平江は言います。

ファインバブルの発生機構だけでなく、細かなユーザーの声にしっかりと耳を傾けてミラブルは着実に進化を遂げてきているのですね。

平江さんやサイエンスが研究開発にかける熱い気持ちが周りを動かしていくんでスー

世界を変える水の今

ミラブル発売から7年が経過しようとしている今、「世界を変える水」は、家庭・美容分野にとどまらず、医療、農業、工業などさまざまな分野で新しい可能性を広げています。

“泡の魔術師”平江は尽きることのない探求心を持ち続け、これまでにない新たな価値を生み出し、ミラブルテクノロジーを通じて社会の持続可能な未来づくりに取り組んでいます。その技術は今、人々の暮らしをより豊かにする画期的な技術として、多くの人に愛され続けています。

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