データで見る、ミライ人間洗濯機への反響 ―来場者の声と開発者が語る技術の未来―【後編】技術革新と未来への展望

2025.11.21 インタビュー

前編では、大阪・関西万博で1,277名が体験し、98.3%という高い満足度を記録したミライ人間洗濯機の成功データと、開発の舞台裏をご紹介しました。サイエンス専務取締役・平江 真輝をはじめとする開発チームと、大阪大学准教授・神吉 輝夫先生との共同開発により、ファインバブル技術と非接触生体計測技術を融合させた「体も心も洗う」という新しい価値が実現。多くの体験者から「肌がすべすべになった」といった驚きの声とともに、「一般家庭や介護現場への普及」を望む声が寄せられました。

後編では、神吉准教授へのインタビューを通じて、万博での実証実験から見えてきた科学的成果と、この技術が医療・介護・ヘルスケア分野にもたらす可能性を探ります。1970年の万博で夢として描かれた「人間洗濯機」は、どのような未来を切り拓いていくのでしょうか。

大阪大学准教授・神吉 輝夫先生 インタビュー

技術的革新性

―このプロジェクトにおける技術的革新性について、どのように評価されていますか?

ファインバブル技術という現代のリラクゼーション効果のある技術に掛け合わせるように、エビデンスを技術的に確立させるようなプログラム構築が実現できました。この技術融合そのものが革新的でした。1970年の「人間洗濯機」というレガシーのコンセプト自体は変わっていませんが、使われている技術や考え方は全く新しいものとして生まれ変わっています。

開発過程でのブレイクスルー

―開発過程で最も印象に残っているエピソードや、発見があれば教えてください。

いろんな方に興味を持って体験いただいた結果、興味深い「個人差」が見えてきました。筋肉量が多い方、高齢の方、若い方など、それぞれで自律神経の様相が変わってくるのです。人の個性を分類できるレベルまでデータが取れたことで、将来的にはもう少し精密にカスタマイズできる可能性が見えてきました。このように、個人差を可視化し、そのデータに合わせて付帯サービスをつくっていくことで、将来的には健康リスクの予測にもつながると言えるでしょう。

私たちが基礎研究として取り組んでいるのは、親子関係における生理現象の研究です。

今後は、取得した個人のデータを「人と人との生理現象における関係性」へと研究を広げていこうと思っています。実は、日常生活における心拍データはこれまでにあまり存在しませんでした。研究室のような綺麗な環境、ノイズのない状態でのデータは豊富に取得できているのですが、日常の中でのデータは貴重です。

今後は、親子関係がどのような心理状態であり、子供にどう影響を与えているのかデータとして明らかになっていくことで、多くの人を助けることができると考えています。

ミライ人間洗濯機開発に使用する試験機器を設置する神吉准教授

万博での反響

―来場者の反響を実際にご覧になって、どのように感じられましたか?

私自身は現場ではなくメディアを通じて反響を見ることが多かったのですが、現場に行くと300人ほどがミライ人間洗濯機の周りに集まっており、期待値の高さを肌で感じて驚きました。

実は、当日までに機械自体は完成していたものの、どれくらいの来場者に体験いただけるのか、「耐久性」については試験期間が十分でいなかったため、不安に思う気持ちもありました。

しかし、実際には半年間一度も止まることなく稼働しました。当初、1日の体験者数はマックス5名ほどでしたが、「体験したい」という声の多さから、体験人数を増やしました。これは、この心地よい入浴体験を、「より多くの人に体感いただきたい」というサイエンスさんの気持ちによるものだったのですが、一度もエラーを起こすことなく稼働し続けることができたので安心しました。

また、開幕2日目には、なんとアメリカから「ミライ人間洗濯機を買いたい」という問い合わせもあったそうです。

一方で、これほど反響があり、細部までズームして映像に映ることが多かったので、もう少し細部まで綺麗に作り込みたかったという思いもあります。

ファインバブル技術の未来

―専門家の立場から、ファインバブル技術には今後どのような可能性があるとお考えですか?

ファインバブル技術にはさまざまな可能性があると思っています。サイエンスさんが掲げている「健康社会の実現」に向けて、ミラバスが持つリラクゼーション技術と、私たちのセンシング技術がコンビネーションすることは非常に重要だと感じています。

サイエンスという企業について

―今回の共同研究を通じて、サイエンスという企業、またはこのプロジェクトチームについて、感じられたことがあれば教えてください。

サイエンスさんはフットワークが非常に軽く、共同研究がしやすい企業です。私が提案したことをしっかり拾ってくれて、それらを実装化させるスピードも速い。研究者の立場からすると、これは本当にありがたいことなんです。

研究と社会実装の間には深い谷があって、その谷を乗り越えるのは非常に難しい。ほとんどのスタートアップはその谷を越えられずに消失していきます。サイエンスさんは、研究と社会実装の「橋渡し」が非常に上手なんです。

特に平江専務は研究者気質の方で、将来の宇宙シャワーなど未来を見据えて開発されている。商売っ気がないというか、研究者として非常に共感できる部分が多く、親和性が高いと感じています。

試験機器を手にインタビューに応じる神吉准教授

読者へのメッセージ

―最後に、この技術に期待を寄せる読者の方々へメッセージをお願いいたします。

大きなことを言わせていただくと、私たちが目指しているのは「お風呂のインフラ化」です。お風呂に入るだけで、自分の自律神経や心拍の状態を意識することなく測定できる。自宅のお風呂だけでなく、温泉などでもそういうことができるようになれば、何気なく入浴しているだけで自分の健康状態がわかるようになります。そうなると、病気を未然に防ぐことができ、医療費や社会保障費を抑えることにもつながります。

ウェアラブル機器の場合、電極付きの服を着るなど、以前から試みはありましたが、専用の服を着なければならない違和感がありますし、「つける」というワンステップが入る時点で異物感があります。何も意識していないところで健康診断ができるというのは、非常に画期的なことだと思っています。

みんなが健康になる社会にシフトすることで、経済活動も活性化すると考えています。サイエンスとの技術融合によって、そんな未来を実現できると信じています。

神吉 輝夫准教授プロフィール

大阪大学 産業科学研究所 准教授。

生体機能を模倣したエレクトロニクス材料・デバイスの研究に従事。物質科学とバイオミメティクスを融合させ、超省エネで動作するシナプティックメモリやセンシング材料の開発を目指す。応用研究では独自技術によるバイタルサイン計測手法や、五感刺激を用いたリラクゼーション機器を企業と共同開発。「人に自然と馴染むやさしいテクノロジー」の実現を追求している。

神吉准教授のお話を聞いて、みんなが自然と健康になるような未来が本当に見えてきたでスー!

入浴が健康インフラになる未来へ

神吉准教授が描く「お風呂のインフラ化」という未来像は、自宅や温泉で何気なく入浴するだけで、自律神経や心拍の状態を測定して病気を未然に防ぐ。意識することなく健康管理ができる社会です。サイエンスのファインバブル技術と、神吉准教授の生体計測技術が融合して生まれた「体も心も洗う」という新しい価値。万博で実証されたその効果は、健康社会の実現、医療費の削減、経済活動の活性化へとつながる可能性を示しています。

1970年の万博で夢だった「人間洗濯機」は、現代の技術により実現し、さらにその先の未来へと歩み始めました。ミライ人間洗濯機が示した可能性は、誰もが健康で心地よい暮らしを送れる社会への扉を開いたのです。

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